【法令解説】「追い越し」と「追い抜き」何が違う?右側?左側?事故を防ぐための正しい手順と、やってはいけない二重追い越し
運転中、前の車が遅くて「抜かしたいな」と思ったことはありませんか?
でも、教習所で「追い越しは危険」と習った記憶があり、躊躇してしまう……。
実は、前の車の前に出る行為には**「追い越し」と「追い抜き」**の2種類があり、それぞれルールが違います。
これを混同していると、違反になるだけでなく、重大な事故につながります。
今回は、ペーパードライバーの方が迷いやすい**「追い越し・追い抜きの定義」と、安全に行うための「正しい手順」**について解説します。
■ 1. 「追い越し」と「追い抜き」の違い
言葉は似ていますが、決定的な違いは**「進路変更(車線変更)をするかどうか」**です。
① 追い越し(進路変更あり)
・車線を変えて、前の車の前に出る。
・(例:右車線に出て、抜かして、左車線に戻る)
・危険度:高い(対向車線にはみ出す場合もあるため)
② 追い抜き(進路変更なし)
・車線を変えずに、前の車の前に出る。
・(例:2車線道路で、右車線を走っていたら、左車線の車より前に出た)
・危険度:比較的低い

【体験談】「追い越しちゃダメ」の勘違い
以前レッスン中に、片側2車線の道路の右側を走行中、左側を走る車とずっと並走している場面がありました。
お客様に「どうしましたか?」と尋ねると、
「所々に路地(交差点)があり、追い越し禁止場所かもしれないので抜いていいのか悩んでいた」とのことでした。
しかし、この道路は優先道路(交差点でも追い越しOK)であり、かつ、私たちは次の信号を右折するために最初から右車線を走っていました。つまり、これは進路変更を伴わない**「追い抜き」**です。
これをお伝えすると、お客様はご自身の勘違いに気づき、「なるほど!」と納得して安心して走行されました。
■ 2. どっちから抜く?「右側」が原則
次に、左右どちらから抜くかです。
原則は**「右側から」**です。

なぜなら、日本の車は右ハンドルなので、右側の方が視界が良く、対向車を確認しやすいからです。
例外:「左側」から抜いていいケース
ただし、以下の場合は**「左側」**から通過することが許されています。
1 前の車が「右折」しようとしている時
・右折待ちで道路の中央(または右端)に寄っている車の、左側を通る場合。
2 路面電車がいる時
・路面電車は原則「左側」を通ります。(※線路が左端にある場合を除く)

■ 3. 絶対にダメ!「二重追い越し」
追い越しの中で最も危険なのが、**「二重追い越し(二重追い越しの禁止)」**です。
定義がややこしいですが…
「前の車が、さらに前の車を追い越そうとしている時」に、自分が追い越すことです。
(※前の車が「自動車」を追い越そうとしている場合に限ります)

要は、**「追い越し合戦に参加してはいけない」**ということです。
前の車が追い越しを始めたら、終わるまで大人しく待ちましょう。
その他の追い越しを始めてはてはいけない場面
1 前の車が右折などのために進路を右に変えようとしているとき

2 道路の右側部分に入って追い越しをしようとする場合、反対方向からくる車や路面電車の進行を妨げるとき

3 道路の右側部分に入って追い越しをしようとする場合に、追い越した車の進行を妨げなければ道路の左側部分に戻ることができないとき

4 後ろの車が、自分の車を追い越そうとしているとき

これらの場合は、追い越し禁止場所でなくても、他の交通などに著しく危険を及ばすため追い越しが禁止された状況となります。
■ 4. 実践!安全な追い越しの手順
では、実際に追い越しをする時の手順です。
ただアクセルを踏むだけでは事故になります。
1 安全確認(前方・後方・対向車):
特に対向車が来ていないか、十分な距離があるかを確認。
2 右合図(ウインカー):
3秒間出して、周りに知らせる。
3 進路変更・加速:
右に出て、加速して抜く。(※制限速度内で!)
4 左合図・確認:
左合図を出し、ルームミラーに抜いた車が映るまで進む。
5 元の車線に戻る:
緩やかに左へ戻る。
【衝撃の実話】戻るタイミングを誤った事故
以前、私が勤務していた自動車学校で、あるベテランインストラクターが教習中にぶつけられるという事故が起きました。
原因は、免許を取得した直後の初心者ドライバーでした。
同乗者に「教習車が遅いから抜け」とけしかけられ、無理に追い越しをかけたそうです。
ところが、普段そんな運転をしないため、**「元の車線に戻るタイミング」**を見誤り、慌てて左に戻った結果、教習車に幅寄せをして接触してしまったのです。
追い越しは、抜く時だけでなく**「戻る時」**にも高い技術が必要です。
■ まとめ|無理な追い越しは「百害あって一利なし」
今回のポイントを整理します。
1 進路変更あり=追い越し、なし=追い抜き。
2 原則は**「右側」**から。右折車と路面電車は「左側」。
3 前の車が追い越し中は、自分は行かない(二重追い越し禁止)。
特にペーパードライバーの方は、
「迷ったら追い越さない」
というのが一番の正解です。数分早く着くために、事故のリスクを冒す必要はありません。
愛知ペーパードライバースクールでは、
「車線変更のタイミングが掴めない」
「追い越し時の距離感が分からない」
という方のために、助手席で安全確認をサポートするレッスンを行っています。


愛知ペーパードライバースクール 名古屋校 代表
服部 寛嗣
2011年から名古屋市内の指定自動車学校で勤務し、
10年間で延べ25,000名以上の技能・学科指導を担当。
現在は出張専門のペーパードライバー講習を行い、
年間約200名のサポートをしています。
中型・二種・大型二輪を含む複数の免許、
教習指導員・技能検定員・高齢者講習指導員など
幅広い資格を保有。
2025年5月8日
